femtocellという技術

つい最近(8月末)ABI Researchがレポートを書いて発表したfemtocell技術というのがある。日本のメディアも取り上げた。2011年までに1億人以上が利用するようになり、世界で3200万個のアクセス・ポイントが出来るというものである。プレスリリースや要約を読んでもあまり良く分らない。取り上げている他のメディアも単に要約をさらに要約しているだけでさっぱり分らない。しかし、いちいち高いレポートをがんがん買うわけにもいかないので、ネットで色々と探したがどうも詳細が分からない。こうなると意地でも探したくなる困った性格である。この技術のスタートアップはUbiquisys、ip.access、 3Way Networks、PicoChipのほか大手のMotorola やTIも参入しているようである。スタートアップを見ると大部分がイギリスベースである。これはGSM/UMTSキャンプがヨーロッパであることを思えば、まあ妥当なところではないだろうか。それぞれのサイトに行って一番多くの情報があったのはip.acessで、それ以外はサイトだけの情報でははっきりと分らなかった。このうちUbiquisysだけは、登録するとにはホワイトペーパーを送付してくれる。但し受け取る位までに1週間はゆうに掛かった。当初はこちらの情報を吟味して相手にするのに十分か見極めているのかと思ったが、どうも単に人手が足らずに時間が遅れただけのようである。ホワイト・ペーパーを読んでようやくわかった。

Ubiquisysの議論としては、携帯電話というのは、出先だけで使用するものではなく、家庭・企業内でも使用されることが多い。(Sprintのデータでは25-40%のコンシューマ・カスタマーの使用は家だそうた。)その場合、電波の届きが屋内では(特に鉄筋のビルなど)悪くなる傾向がある。現在GSMキャンプ(米国・アジアの一部を除く)ではGSMの次世代のUMTS、WDVMA、HSDPAへと移行していく。周波数が高くなると、電波は届きなくなるので、屋内では更に困難になるという議論である。そのため、屋内(家庭や企業)に来ているBroadbandに接続できる、セリュラーのセルを提供しようというものである。(Broadbandの接続内ではVoIPで運ばれるが、これはキャリアが認めているのでパケットのQoSなどを保障する。)似たような発想ではWifiのアクセス・ポイントが屋内にあれば、VoIPを駆使して(例えばskype)電波の届きにくい屋内で使用できる。既に、セリュラとWifiを搭載した2重の携帯電話もある。(この分野でNokiaCiscoが協業している。)但しQoSも問題へ電波の干渉で果たしてどれだけWiFiによる解が成功するか分らない。更に、なんらかのビジネスモデルを考案しないと、ただ乗りされるキャリアがVoIPのパケットを落とすということも考えられる。以前訪問したKineto Wirelessでは、この問題を外では例えばVerizon Wirelessのセリュラー・サービスで屋内ではVerizonから引いたDSLVoIPをやって、それなりにチャージに積めばVerizonも怒るまいという議論でそれはそれで説得力はあるが、何時も携帯電話の提供社とDSLの提供社が同じとは限らないであろう。

これが広まるという他の理由としてあげているのは、セリュラーのセルの構築が健康などを心配する付近住民からの反対で大きく展開出来ず、屋内に限らずこれ以上増加させることが困難だということだ。また、Wifiをもサポートする携帯電話はセリュラーのみの機能のものに比べて、製造費がかさみその分割高になる。音質やサービスが安定せず、また電話そのものが高い場合はたしでどれだけの人がこの解を選択するのだろうかと述べている。Ubiquisysはイギリスの会社なので、市場データが西ヨーロッパに偏っているが、その市場データによれば2010年にはGSM/UMTSのみを搭載している電話は全体の65%でWifiも同時に搭載している電話はわずか17%だとか。

さて、この技術をどうのこうのと言う前にスタートアップのウエブサイトを見た感じでは、これはまだまだ実際に製品が展開されるまでにかなりの時間を費やすであろうと考えられる。Wifiは非常に不安定な技術であるので、完全なQoSの保障は困難であろう。音質などを考慮しない通話ならばWifによるVoIPは問題にならないかもしれないが、多くの人が働く企業内などでは果たして、QoS以外の電波の干渉の問題等を乗り切れるかは非常に疑問である。そういう面では、この技術は現存の携帯電話になんらの手を加える必要もないので、適用されやすいであろう。GSMキャンプでもデータ通信への改善が続いており、Wifiがなくても、携帯電話からデータ通信が可能となる。しかしながら、まだ始まったばかりで、今後どうなるかは不透明である。この分野のスタートアップも大手もあまりにも情報を出さなさ過ぎるので、実際にどの程度使用可能なのか、その他の技術的なハードルへの見極めも困難である。今後とも見守りたい。

Zeekay