携帯電話のOS
今日は以下について述べる。
- 市場調査会社のARCchart社の最近の携帯電話のOSを含むソフトの動向を述べたホワイトペーパー (題名:Mobile Operating System: The New Generation) のまとめと、
- それを元に考察したビジネスチャンス
このペーパーでは、携帯電話のOSは今後Linuxがのし上って来ると結論づけている。Independent Researchと謳っているが、このスポンサーはTrolltech (http://www.trolltech.com/)で携帯電話のソフト開発環境を開発・販売している。これも加味して読まなければならないが、なかなか納得できる点も多々ある。ちなみに、このホワイトペーパーはhttp://www.arcchart.com/reports/mos.aspから無料で入手できる。全部で27ページ。
以下、要約と(最後に筆者の意見):
まづ最初に、市場・技術傾向として:
- サーバーやデスクトップの環境と同様、携帯の世界でもOpenということが重要であった。しかし、これはProprietaryに対するOpenであって、最近はFlixibleであることが大切になってきた。
- OSはコモディティになってきた。
- 技術の垂直インテグレーションが必要になってきた。
#1のFliexibleということは、色々な要素が変わっても一貫性があるということである。{ペーパーでは、携帯電話のソフトの階層をOS,ミドル、AEE(アプリ実行環境)、UI(ユーザ・インターフェース)とアプリに分けてある。}特にAEEの一貫性が大切であると主張している。
つまり以下の要素が変わっても同じAEEが使えることが肝要:
- 装置やモジューロ
- メーカー
- オペレーター
- 地域
当初、JAVAのJ2ME (現在はJME)がこれを満たす環境として期待されたが、実際にはJAVAはこれを満たすことができなかった。(ちなみに、dartdevicesという会社がこの問題を解決する技術と製品を開発している。Motorola社がこの会社に出資をして、この技術を採用して来年初めにMotorolaの携帯電話に組み込まれる予定。但し、ここの方針はまだStealthモードで行くとして、ウエブさえもない。筆者はコンサルを時々しているので知っている。)。(ちなみついでに、JMEもJSEと同様オープンソース化されるようである。)
Fliexible OSの条件としてはその他に、Rapid UI開発と多くのチップに移植されていることである。UI開発にはオープンであるため、色々な会社が解を提供しており、Linuxは1ダース以上のチップに移植されている。
#2のコモディティ化ということは、OSによる差別化のかげりで競争は上位ソフト層で、儲けもそこにある。一応無料のLinuxはコモディティ化の申し子のようなもの。
#3の技術の垂直インテグレーションはLinuxはオープンソースであるから、垂直インテグレーションを実現しやすい。
上記の議論を踏まえて、現在良く使われている次のOSを評価:
- Brew: Qualcommの力が弱まらない限り安泰。だが高価でQualcommの締め付けが厳しすぎる。
- MS:tier-2/3に人気、one stop ソルーション提供社
- Symbian: Nokia, ドコモ、Sony Ericssonのみ。Nokiaの影響力が強すぎる
- Linux:Tier-1で人気、1つのベンダーに縛り付けられうことがなく、安価で柔軟性大。
- Nucleus: 機能的に弱い
更に補足すると、今までの選択はSymbianかMSしかなかった。SymbianはNokiaが47.9%の株式を押さえており、NokiaのOS部門の呈をなしている。Nokiaは過去2年間でSymbianベースの携帯電話の70%を販売してきた。この数約3,500万個。NokiaがSymbianに払うロイヤリティは年間$100M (116億円)に上るとか。Nokiaの人気のAEEであるS60をLinuxに移植するには約$100M掛かる。しかし、これは1年間のSymbianへのロイヤリティの払いと同じで、Linuxは基本的にロイヤリティがない。だからやるかと言うわけでもないが。
更に、最近のLinuxのニュースとしては、MotorolaのLinuxへのコミットメント、WindriverのLinuxへの傾斜などが上げられる。8月のLinuxworldではMotorlaは大々的にLinuxへのコミットメントを発表している。
とくると、結局全部を総合するとLinuxしかなく、市場もその方向に向いていると結論づけている。もちろん、Linuxにも問題はあり、電話機能がない、電力管理のなさ、リアルタイム性のなさなどは克服されなければならないと結んでいる。
最後の章にはUIとAEEを提供するベンダーの製品のまとめとそれぞれのベンダーの製品戦略を載せて終わっている。これはかなり詳細で、15社の製品に関してまとめてある。15社にはMS, Nokia s60, Adobe,Montavista, Brew, Symbian, Trolltech (このホワイトペーパーのスポンサー)など。。。それぞれの内容は紙面の関係で割愛、興味のあるかたはhttp://www.arcchart.com/reports/mos.aspから無料で入手されたい。
筆者の意見
一昨年ドコモさんとお話をする機会があったとき、ドコモさんは将来のOSはSymbianとLinuxしか考えていないとのことだった。それにしても、ドコモさんかなり先端的なことをおやりになっている。あちこちで先端技術を既に、実装なさっている。その時はLinux?と思ったが、さすが読みが早いと今感心。
後はNokiaがSymbianをどう扱うかであろう。長期的にはLinuxに移行するも、直ぐにもSymbianを捨ててLinuxへとは行かないであろう。Symbianをコントロールして今の地位にいるNokiaと2位に甘んじてきたMotorolaの動きは対照的である。Motorolaの動きは素早い。Linuxへのコミットメントを明確にして、多くの買収(イギリスのTTPCOMは携帯ソフトの専門メーカだったが最近買収された。ここの人を知っているので。。)、技術提携(上記のdatedevices。。かなり進歩的な技術であるが、採用に至った動機はMotorolaの内部の携帯のソフトとアーキテクチャーを根本から見直したいということ。新しいCEOは燃えている。)など動きが多い。数多くのLinuxベースの携帯電話も発表している。特に中国で。。。
さてこういう市場・技術動向が正しいとして、どのようなビジネスが有望であろうか。まづ、携帯電話の仮想化ソフト会社のvirtuallogix(つい最近まではJalunaと言っていた。)。この会社は携帯ベンダーは一挙にLinuxにはいくまい、Linuxはrich OSとして位置づけ、レガシーのアプリ(リアルタイム要求とかもっとセキュアな要求とか)は既存のRTOSで処理したいという要求が強いだろうと見こんでいる。この2つの環境を両立させるこの仮想化の技術はかなりの成功を収めるとみている。競合のTrango Systemsにも目が離せない。
もう1つ考えつくのは、OS層から上のソフトの階層の提供であろう。特にLinuxに特化してミドルやAEE層で、例えばセキュリティに関した解、暗号化、ストレッジ、トラステッド・ブート、認証、ID管理等などを提供するのはどうか。ペーパーに出てくる15社と競合するのではなく、こういった解がないベンダーと協業することは可能ではないだろうか。もちろん、こういったexpertiseがなければ、可能ではないが。。。。