地方公共団体によるWiFi

昨夜、カリフォルニアの無線通信グループ(www.wca.org)のメトロSIG (http://www.wca.org/METRO_info.htm) の発表に参加した。このSIGは地方公共団体でのブロードバンドのトレンドをカバーする。昨夜は今盛んに論じられている地方公共団体、例えば市(例として最近話題になっているのは、Phialdelphia, SF、Portlandなどなど...). 地方公共団体ではないが、最近は近郊のMountain ViewのGoogleによるWiFiの無料提供もある。更に、CupertinoとSanta ClaraとSunnyvaleの3つの市ではMetroFiという会社(http://www.metrofi.com/)が無料でWiFiアクセスを提供している。筆者はCupertinoに住んでいるが、家の場所によってはこのMetroFiの信号を拾うことができる。ただ信号が弱いので実際に使うことはない。また、今年の終わり辺りから、シリコンバレー全域で無料のWiFiが提供されることになっている。このグループMetro Connectは2007年にはWiMaxのサービスも提供する予定である。

HPのGerhard Schmid氏(Director Americas Network Services Marketing)の講演はMetro WiFiの実際の例であった。HPと他社1社がサポートして、Florida州のSt. Cloud市、{Orland市、(Disney Worldがある)の南の郊外}、でこの市が市民に対して無料でWiFiによるインターネット・アクセスを今年の3月より提供始めた。最高スピードは1MBpsで、St Cloud市の狙いは幾つかあるが、大きく分けて、

  • 経済刺激
  • 治安・警察のサポート
  • 市が提供するサービスの経費節減
  • 教育
  • digital divdeの解決

である。

退屈な統計資料はあまり上げたくないが、こういう資料はあまり発表されていないので。この市は

  • 広さは約39平方Km
  • 人口約3万人
  • 世帯数約1万件
  • 平均年齢、33才
  • 大学以上の教育、33%
  • APの総数、320
  • gatewayの総数、45
  • 77%の世帯がこれを利用
  • このWifi (Mesh Network)を利用する前は37.6%の市民は一切のインターネットへの接続を持っていなかった。
  • 建設に要した費用、$3.1M (約3億6千万円)で年間の維持費は50万ドル(5千8百万円)である。なお、サービスは無料である。
  • このWiFiを利用することで、市の経費節減は年間64万ドル(6千8百万円)。正味1千万の削減になった。
  • 80-90%の市民が支持、中にはこのアクセスだけにして、既に契約しているインターネットへの接続の契約を破棄したいというが90%もいた。

この発表に関しては多くの質問が出た。まづ、このサービスが全くの無料であるということがはっきり示されなかったので、一体誰がこのサービスの経費を払うのかという質問が多く出た。しかし、始めの投資を考えても毎年に経費節減や将来サービス費のチャージを考えれば、利益を生む必要のない地方公共団体としては、十分であろう。また、発表の中で、T1 replacementという様に使用され、そのためT1に掛かる経費が節減されるという話があった。これに関しては、詳細な説明はなかったが、最高スピードが1Mbpsしかなく、更に無線のため帯域やスピードが安定しないMesh Networkではたして同様の信頼性を得ることが出来るのであろうか。いわゆる、mission criticalでないアプリに限られるであろう。

更に、90%以上の参加者が現在のプロバイダーをやめて、このアクセスのみにするという事であったが。これは、アンケートの時の解答で実はせいぜい5%程度が現存の接続契約を解除したに過ぎないということである。以前ブロードバンドの基礎と言われていたT1スピードの1.5Mbpsは最近では遅く感じられる(日本の状況からは信じられないかもしれないが、帯域およびスピードに関してはアメリカは遅れている。DSLを持っている人でも大部分は1.5Mbpsかそれ以下。ケーブルでも理論値はせいぜい6Mbps)筆者はケーブルによるインタネット・アクセスを使用していたが、度重なる買収とそれに伴う接続の停止と料金の値上げ、またそれ以前にもかなり頻繁に接続が落ちることで、DSLに変更している。当初は1.5Mbpsであったが、現在は3Mbpsに格上げして大体2.4Mbps程度出ている。もう少し速くても良いが、まあ我慢できる範囲である。(6Mbpsに格上げしない理由は価格もあるが、ちゃんと格上げせずに請求だけはあがるのではないかという危惧からだ。30数年いるけれどこの国はサービスは信用できないな。)筆者が典型的なユーザとは言えないかもしれないが、ここで外で1Mbpsということは屋内では多分いいところ、600Kbpsからよくても700Kbpsであろう。しかも、スピードや帯域が多くの要素によってかなり変わるという不安定な接続である。90%が今の接続をやめて、市の無料の接続にすると言って、実際には5%しかそうしていないのは十分理解できる。

色々と書いたが、この話で一番面白いと思ったのは、市のサービス提供の費用節減ということと、digital divideの解消である。費用節減はネットにアクセスできることで、市の従業員の時間削減によるものだという。これは、地方公共団体がMunicipal WiFiを提案して実行するには大きな力となる。最後のDigital Divideの解消であるが、これからの社会でネットを自由に使えこなせないことは、大きなハンディキャップとなる。37.6%がこのサービス前は全くネットにアクセスがなかったということは、大きな事実で、この37.6%にアクセスを与えたことで、アメリカが先進国でいられるための条件を満たさせたという点は大きい。いまやネットのアクセスは水道、電気、ガス、電話に続きなくてはならないものになって来たから。

それにしても、この国のネットのアクセスと携帯電話はなんとかならんのか。早く、光来い。。。携帯の受信をただにしろ。。。費用が高すぎる。。。データ通信を改善しろ。。。。。

Zeekay